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「じゃ、行くか」
ボソッと呟いた隼斗の声を聞き、美羽は大きく頷いた。
「うん!」
良かった……
だが、隼斗の足が止まり、美羽を振り返った。
「義昭くんのご両親に挨拶しておかないとな」
「あっ、大丈夫!
その、お正月でバタバタしてて手が離せないから……よろしく伝えてほしいって言われてたの」
「そうなのか?」
何度も嘘を上塗りすることに胸を痛めつつ、美羽は何かのきっかけでようやく掴んだ逃亡の機会を逃さないよう、必死に取り繕った。
「うん……」
隼斗が「そうか」と答えて、引き戸に手を掛け出て行く。その後ろ姿に、美羽は安堵の息を吐いた。
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