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そんなことを考えて溜息を吐いていると隼斗が運転席に乗り込んできたので、慌てて表情を取り繕った。
「忘れ物はないか?」
「うん、大丈夫」
この家に私のものなんて、何ひとつない。
忘れたい、何もかも……せめて、今だけは。
美羽は睫毛を伏せて震わせてから、真っ直ぐ前方の景色を見据えた。
「そうだ、美羽」
ふと思いついたように隼斗に声を掛けられ、美羽は小さく肩を震わせた。
「どうしたの?」
もしかして、何かあった?
お願い、この後に及んでやっぱりやめるなんて言わないで……
美羽が不安に駆られながら隼斗に顔を向けると、頭を下げられた。
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