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隼斗の提案に、美羽が反論する。
「車でなんて遠すぎるよ。隼斗兄さんしか運転出来ないし、それじゃ疲れちゃうでしょ」
「心配するな、運転は嫌いじゃない。
夜通し走れば、朝には着く。美羽は寝てればいいから」
真面目であることが隼斗の長所でもあり、短所でもある。隼斗は『今日、福岡に行く』という目的をなんとかして達成しようとしていた。
空港を出て高速の入口を目指して車を走らせる隼斗を横目に、美羽の胃がキリキリと絞られる。
『今日は行くのをやめて、明日の飛行機で福岡に行こう』と言えば、それで済むこと。そうすれば、隼斗兄さんに夜通し運転させることもない……
そう思うのに、なかなか言い出せない。
出発を明日にすれば、今からまた義昭の実家に戻らなければならない。いや、それを避けて家に戻ったしても、既に義昭と琴子がそこにいるのだ。美羽には、どこにも行くところなどない。
ホテルに泊まれば……そう考えたが、翌朝には隼斗が再び義昭の実家に迎えに来ることを思うと、それも無理だった。
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