訃報

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「で、でも義昭さんは仕事忙しいだろうからだいじょ……」 「美羽がこんなにお父さんの死にショックを受けているのに、一人で行かせるわけにはいかないよ」  美羽は言われて愕然とした。真っ暗になったことさえ気づかず、ソファに呆然と座っていた美羽は、父の死にショックを受けているのだと義昭に思われていたのだ。  こんな優しい気遣いをされたのは、どれぐらいぶりだろう。そうだ、夫は以前は優しい人だったと美羽は思い出した。 「それに、美羽はアメリカに行っても英語が喋れないから困るだろうし」 「そ、れは……そう、だけど」 「大丈夫。義父の葬儀がアメリカであると説明すれば、いくら仕事が忙しくたって4日ぐらいの休みならとれるさ」 「うん……」  義昭は完全にアメリカに行く気になっていて、既にスマホを手にし、飛行機のチケットを調べ始めていた。新婚旅行の時でさえ一切美羽に任せきりだったのに、珍しい。これも、父の死で弱っている自分を労わってのことなのか……  美羽は、スマホを弄る義昭の背中に溜息を吐いた。  封筒の宛名には、『朝野 美羽様』と書かれていた。ということは、類は私が結婚して姓が変わっていることも知ってるんだ。  もしかして、昔のことにこだわっているのは私だけなのかな。類はただ、お父さんが亡くなって心細くて、私に来て欲しいと思っているだけなのかも。夫を紹介するのはいい機会なのかもしれない。  そうであれば、これは断ち切れなかった類への思いにけじめをつけるいい機会になる。  類、だって……あれから恋愛して、結婚して、もしかしたら子供だっているかもしれないんだから。  そう考えた美羽の胸に、突き刺すような痛みが走った。
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