あの日の過ち

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あの日の過ち

「もう、類ってば! そんなにくっついたら料理出来ないよ」 「だって、学校ではこんなこと出来ないから。ミューと片時も離れたくない」  父のアメリカ出張に母が伴って1週間不在となり、学校から帰った美羽は母の代わりにキッチンに立っていたが、類に後ろから抱き付かれて包丁を持つ手を止め、困ったように振り向いた。 「類がお腹空いたって騒ぐから、すぐに夕飯作ろうとしてるのに。だったら、類も手伝ってよ」 「ふふっ、いいよ。そしたらもっと二人で一緒にいられる時間があるもんね」  類は美羽の腰に回していた手を離すと、横に立った。 「何すればいい?」 「じゃ、にんじん切ってくれる? あ、このぐらいの大きさね」  目を離すと適当に切ってしまう類のため、見本のにんじんを切るともう一枚のまな板を類の手前に置き、その上に載せた。見た目はそっくりなのに、性格は全然違う。類の自由奔放さが美羽には眩しく、羨ましく思う。だからこそ、こんなに強く惹かれるのかもしれない。 「はーい」 「もうっ、類。ちゃんとやってね」
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