彼女は待っていた

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 二月十四日の夕方――  成田国際空港、第1ターミナルの中にある、カフェベリーのテーブルで、一人の女がコーヒーを飲んでいた。  彼女の足元には旅行用カバンがあった。  そしてテーブルには、ピンクのリボンの付いた小さな包みを置いていた。  その女――エリカは都立F大学の二回生だった。  彼女の強い希望だった、フランスの国立大学へと留学が認められ、二年間の約束で、きょう旅立つことになったのだった。  カフェベリーのスタッフ達は…… 「あれは多分、誰か恋人でも待っていて、プレゼントを渡すつもりだよ。だって今日は、バレンタインだから……」  と異口同音で雑談していた。  しかし、その相手と思える人は、いっこうに現れなかった。
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