3人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
二月十四日の夕方――
成田国際空港、第1ターミナルの中にある、カフェベリーのテーブルで、一人の女がコーヒーを飲んでいた。
彼女の足元には旅行用カバンがあった。
そしてテーブルには、ピンクのリボンの付いた小さな包みを置いていた。
その女――エリカは都立F大学の二回生だった。
彼女の強い希望だった、フランスの国立大学へと留学が認められ、二年間の約束で、きょう旅立つことになったのだった。
カフェベリーのスタッフ達は……
「あれは多分、誰か恋人でも待っていて、プレゼントを渡すつもりだよ。だって今日は、バレンタインだから……」
と異口同音で雑談していた。
しかし、その相手と思える人は、いっこうに現れなかった。
最初のコメントを投稿しよう!