彼女は待っていた

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 その相手――タクヤは、同じ大学の三回生で、引越しセンターでアルバイトをしていた。  が、その日の夕方、勤務中、荷物の配送ミスをしてしまったのだ。 (ごめん、エリカ……。約束の時間に、間に合いそうにないよ……)  と思いながら、涙目でアクシデントの処理を続けていた。  依頼客の男が、意外なほどしつこく、千葉の支社に出向いていた社長まで呼び出し、駆け着けさせる始末だった。  タクヤは依頼客の自宅前で、時間を気にしながら、ひたすら社長の到着を待っていた。  スマホは、勤務中は使用不可のため、支社の事務所ロッカーに置いたままだったからだ。  やがて到着した社長と共に、改めて依頼客に詫びを入れ、タクヤはようやく事務所に向かった。  時刻は、午後十一時半になろうとしていた。
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