愛を乞う家

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【登場人物】 守屋 冴子(35) 専業主婦 守屋 凌太(37) 冴子の夫 【プロット】 人に声をかけられ目覚めると、そこは屋外階段の踊り場だった。 守屋冴子は身重で、エレベーターの無いアパートの階段は地獄だった。そしてその貧血をきっかけに家を買う事にしたのだ。 中古の一戸建てだが、まだ築4年で価格は相場の6掛け。事故物件かと疑いもしたが、不動産屋の話では、この家を購入した独身女性が門前で車に撥ねられて亡くなった為、親戚が売りに出したと言う。彼女は家が恋人と言うくらい大事にしてた為、屋内はまるで新築。夫の凌太と生後3ヶ月の息子と3人で住むには申し分のない家だった。  冴子は染み一つつけぬよう、毎日磨いた。それなのに夫は、扉の開閉は乱暴で床も汚す。その度に冴子に怒鳴られた夫は息苦しくなり、殆ど帰らなくなった。 そんなある日、隣家の猫が家に入り込んで壁を傷つけた為、冴子はその猫を殺した。流石に夫は恐怖を感じ、初めて妻に手をあげた。 すると突然ドアが軋み出し、守屋の右手を激しく挟んだのである。骨にヒビが入る大怪我。それはまるで冴子を叩いた右手に復讐するかのようだった。 それをきっかけに奇妙な噂が 流れた。昼間、冴子の艶めかしい声が外に漏れ、近所の人は冴子が浮気をしていると言う。夫も、美しくなって行く妻を疑い、監視カメラを設置。すると冴子は何と家の至る所を抱きしめキスをしていたのだ。驚いた夫は冴子を問い詰めるが冴子は無視。夫は遂に切れ、こんな家壊してやると窓硝子を割ったのだ。その瞬間、硝子の破片が夫を襲って一命を奪ったのである。冴子は無表情で言った、貴方が悪いのよと。  半年後――歩き始めた息子が可愛くて、家の事はどうでもよく、息子に愛情を注いだ。その度に家は不快な音を立て、何故か息子が怪我をする。そして遂に息子が水洗トイレの蓋に頭を挟まれ窒息状態。慌てて蓋を剥がそうとするもとれない。焦った冴子は金槌で蓋を叩き壊した。すると家が激しく揺れ、冴子を押し潰そうとしたのだ。冴子は息子の亡骸を抱き、半狂乱で「家に殺される!」と叫びながら玄関を出て道路へ飛び出した。 そこへ猛スピードの車が!  数ヶ月後、売りに出されたその家を若い夫婦が下見にやってきた。すると妻は突然扉に頬ずりし始め、この家が欲しいと恍惚な表情で呟いたのである。 すると家は、その愛に応えるかのように嬉しそうな音を立てた。
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