第0章 導入「はじめは」

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――はじめは、小さな体調の変化だった。 「最近、体の節々が痛むんだよ……腹痛も週に1回は来るし……風邪なのかな」 休み時間、神原優は教室の机に突っ伏して全席の高畑奏太に愚痴をする。 「風邪? 新学期開始早々体調を崩して……大丈夫か?」 「分からん…ちょっとトイレに行ってくる」 「いっといれ~」 「くだらんギャク言うな…」 腹を擦り、椅子から立ち上がる。こんな単純な動作だけでも腹の中から針で突き刺されているような痛みがあり、「…っう」と痛みを堪える声が自然と漏れた。 廊下は休み時間ということで、同級生たちの喧騒に包まれている。高校生活も2年目ともなれば仲良しグループというものが出来上がって、一生の付き合いになっていく馬鹿友がいるだろう。学年が上がっても、クラス替えは無く、入学から代わり映えしないクラスメイト。さっき愚痴った高畑とも、高校に入ってからの友達だ。1年の座席割が偶然隣だったから…最初のきっかけなんて、どこを見てもそんな感じだろう? そんな偶然で適当なきっかけで、生涯の友人になることも十分あるんだろうな…。 そんな具合にプロローグを述べていると、いい具合にトイレが近づいてきた。この腹痛さえなければ、こんな学校のトイレと仲良くなる必要もないんだけどな…。 「――あれ、優じゃん。トイレ?」  正面から声がする。声の主を確認すると、洗面場で手を洗っている幼馴染がいた。 「おぅ、綾夏…まぁそんなとこ。前から腹痛でさ…つらい。」  北牧綾夏。近所に住む幼馴染。きっとコイツとも、長い付き合いになっていくんだろう。誰かと結婚して、遠くにいくことになれば話は違うだろうけどな。 「腹痛? あんたも女子みたいなこというんやね…」 「は?」 「いやほら、女の子の日のことよ。」 「おぅデリカシーのない発言するなそこの女子。」 「あんたとは腐れ縁もいいとこだし、今更女の子らしくしたって…まぁ…(ぶつくさ)」 「…? まぁいいや、早くこの腹痛を収めたいんだ」  じゃあ教室に戻ってるね~ と、ハンカチで手を拭きながら歩いていく。それに軽く手を挙げて応え、トイレの個室へと急いだ。
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