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「ごめんください」
「何方かいらっしゃいませんか?」
玄関の引き戸を開け、公信と交互に中に声を掛けるが物音一つしない。
「出かけているのかな?」
玄関脇に電気のスイッチを見つけ、パチンパチンと上下させる。
「点かねえな? やっぱり廃屋か?」
「点くわけないじゃん」
「どういう事だよ?」
「先輩、電灯に電球が入っていません」
2人の指摘で俺は顔を上に向ける。
「オイ! 友紀」
公信の声を聞き上に向けていた顔を元に戻すと、友紀が家の奥に入って行くのが見えた。
「ごめんくださ~い。
お邪魔しま~す。
何方かいらっしゃいますかぁ~」
声を掛けながら奥に進んでいた友紀が俺達の方へパッと顔を向け、部屋の中を指差しながら嬉しそうに俺達に声を掛ける。
「この部屋に炬燵がある」
俺達に声を掛けた友紀は部屋の中に入って行く。
俺達も友紀に続いて部屋に足を踏み入れる。
「炬燵は点いたよ」
「電気が来ているって事は廃屋ではないのか?」
部屋の押し入れを開け中を覗いた公信が疑問を口にした。
「でもおかしいですよ」
「如何した?」
「押し入れの中空っぽです」
他の部屋の押し入れの中を確認している俺達の耳に、友紀の声が響く。
「温かーーい」
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