第1章

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「ごめんください」 「何方かいらっしゃいませんか?」 玄関の引き戸を開け、公信と交互に中に声を掛けるが物音一つしない。 「出かけているのかな?」 玄関脇に電気のスイッチを見つけ、パチンパチンと上下させる。 「点かねえな? やっぱり廃屋か?」 「点くわけないじゃん」 「どういう事だよ?」 「先輩、電灯に電球が入っていません」 2人の指摘で俺は顔を上に向ける。 「オイ! 友紀」 公信の声を聞き上に向けていた顔を元に戻すと、友紀が家の奥に入って行くのが見えた。 「ごめんくださ~い。 お邪魔しま~す。 何方かいらっしゃいますかぁ~」 声を掛けながら奥に進んでいた友紀が俺達の方へパッと顔を向け、部屋の中を指差しながら嬉しそうに俺達に声を掛ける。 「この部屋に炬燵がある」 俺達に声を掛けた友紀は部屋の中に入って行く。 俺達も友紀に続いて部屋に足を踏み入れる。 「炬燵は点いたよ」 「電気が来ているって事は廃屋ではないのか?」 部屋の押し入れを開け中を覗いた公信が疑問を口にした。 「でもおかしいですよ」 「如何した?」 「押し入れの中空っぽです」 他の部屋の押し入れの中を確認している俺達の耳に、友紀の声が響く。 「温かーーい」
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