第二章:人生を狂わすほどの快感を

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「俺は、何も知らない男を肉便器にするのが得意でさ」 「肉……」 「俺達とおさらばする頃には、突っ込まれたくてたまんねぇ体に仕上げてやるよ」  顔が近づき、サングラスの奥の瞳は、細く優しく目尻が下がっているのだと確認できたときには、すでに唇が塞がれていた。顔をそむけようにも頬を掴まれていて逃げられない。  唇を重ね、舌がねじこまれる。初めてのキスは煙草の味だった。いつか好きになった女性とするのだろうと夢見たキスは、見ず知らずの男に奪われた。  舌を吸われ、唾液が注がれ、息ができず、吐息が漏れる。男の舌は首筋から胸へと動き、寅山は優しく体を倒される。縛られている腕がゆっくりと畳に触れる。  身をよじれば縄が、ぎりりと体を締め付ける。 「色白の肌に縄がよく似合うな」  舌は乳首に到達して、舌先に舐め転がされ、吸われる。時々、舌とは違う硬い金属のようなものが乳首に触れ、感覚の違いに体が跳ねる。胸にただついているだけだったそれが、快感をもたらす場所に変わっていく。  口から、ふ、と漏れてしまう息が、いやらしくて自分の顔がカッと熱くなる。 「いい声で啼けよ。我慢することないんだぜ」  ぎゅっとつぶっていた目を開ける。意識が過敏になると、快感にさらわれてしまう。  茶色の木目の天井を見つめる。ポスターを剥がした後がある。以前の住民のものだろうか。とにかく意識を遠くへ向けるように他のことを考える。感じてはいけない。乱されてはいけない。  男の指が、むき出しになっている体の中心を弾き、寅山は体をびくつかせる。 「はぁっ……!」 「ここ、自分でしか触ったことないだろ」  ぎり、と歯を食いしばり、直接的な快感を逃がす。にやにやと不敵な笑みを雲とに浮かべ、男は容赦なく、その中心を指先で摘んだ。 「ちゃんと剥けてないのか? お坊ちゃんには教えてくれる人もいねえのか」 「やっ……やめろ!」  男は上下に扱きながら、尖端の亀頭を露出させる。 「な、覚えとけ。こうして剥くようにしないと、後から困るんだよ」 「触るなっ…あっ……」 「うわ、ぬるぬるじゃん」 「あっ……!や、やだ……っ」  ぐちゅ、ぐちゅ……と卑猥な音が響く。明らかに自分の性器から溢れている液だとわかり、寅山は目をつぶり、体をよじる。性器に集まった高ぶりは、外へ放出したくて、内部でうねっている。
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