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エレベータの扉が開き、寅山は先に降りる。同じ二十五階フロアには4つの部屋しかなく、寅山の借りている部屋はエレベータから一番遠い。
この部屋の間取りは特別に広く、なおかつ防音設備が完備されている。同じフロアには円満な家族が何も知らずに暮らしているので、寅山の部屋から音が漏れないように気を遣っている。
寅山は着物の袂からカードキーを取り出し、部屋の扉を開ける。閉まりかけた扉に滑り込むように龍崎も部屋に入る。
広めの玄関には靴が一足も置いておらず、備え付けのシューズボックスの中にも何もない。部屋を入ってすぐに台所があるが、キッチン用品は何ひとつ置いていない。ランドリースペースに洗濯機と掃除機が置いてある。唯一、浴室だけはアメニティが充実している。
生活感のない部屋なのは当たり前だ。ここは生活をするための部屋ではないのだから。
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