1 爛漫

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「いってらっしゃい、春明」 「はい、行って参ります、師匠」 微笑む師匠に、何となく気恥ずかしさが込み上げて、固い物言いになってしまった。 少し緊張しているのかもしれない。 俺は、無事に高校に合格した。 今日は入寮の日だ。試験は学校ではなく、妙にだだっ広い建物で受けたので、初めて校舎を見られるという事だ。ちなみに、入学式は明後日にあるらしい。 「楽しめよ」 俺の緊張に気付いてか、師匠が頭をぽん、と叩いた。 「…うん」 頷くと、頭に載った手が撫でるように後頭部へと滑り、一つに括った髪をなぞる。髪が長いと目立つかなと思ったが、おいそれと切れるものでもないので、師匠から貰った紐で結局一つにまとめた。 師匠と同じ髪型で、ちょっと嬉しい。 「ほら、お前達も挨拶しろ」
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