序章

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師匠の去った部屋で一人うろつく。 「学校、か…」 「春明、どこかに行っちゃうの?」 泣きそうな声が響いた。 その声を皮切に、俺の他に人影のない部屋に、声が満ちる。 「ガッコーとやらにかえ」 「まさかそのまま帰って来ないなんてことは…」 「そっそれは困る!」 ざわりとあちらこちらから漏れる、声。『友達』に心配されていることが伝わって来て、少しむずがゆい。心配し過ぎではあるけれど。 「ちゃんと帰ってくるって」 「ホント?嘘はやだよっ」 「嘘じゃないってば。三年だけ、しかもたまに休みあるみたいだし」 夏季休暇とか冬季休暇とかいうものがあって里帰りができる、と貰った資料に書いてあった。 「俺、行ってみたいんだ。学校に」 「そんなに行きたいのか…」 「うー…でもぉ…」 「お願い」 「うううううう」
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