序章

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「無理だって。体に傷をつけたらどうするの」 付喪神の一番の心配は、本体を損ねてしまうことだ。何百年と大切にされて“力”を得た付喪神は、修復不可能な傷を負うと、力を保てなくなる。ーただの器物に戻ってしまうのだ。特にスズは自分の体くらいの鈴を持ったままリンリン高速で飛び回るので、気が気ではない。 あと、一番重要な事を忘れている。 「外じゃ器物は動かないことになっているんだよ。皆がぞろぞろ歩いてきたらびっくりされちゃうよ」 びっくりで済めばまだいい。危害を加えられたら─なんて、想像もしたくない。人間は常識外のモノに出くわすと逃げるか排除する生き物だ。付喪神達をそんな目に遭わせたくない。 でも付喪神達は納得したくないらしい。 「今は器物といえど動くのではなかったかえ?」 「え?」 予想の斜め上の姫さまの発言に、ちょっと呆然としてしまった。さらに他の付喪神も同調する。
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