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「ねえ、司さん? こたつ壊れちゃった。
どうする? もうやめちゃおうか?」
爽やかな朝だ。多分ハムエッグに多分味噌汁、ご飯にかろうじて漬物が食卓に並ぶ。
目の前には愛する妻、みきだ。
俺は自分でも認める愛妻家だ。
妻、みきの為なら何だって出来る。どんなことでもどんとこいだ。
宇宙みたいな食事だって、多国籍な部屋のインテリアだって、得体の知れないSっぷりだって、まるっと全て呑み込んでみせる。
それなのに、それなのに…「みきの好きなようにしなよ」と言えないなんて!
みきのあの話しっぷりから推測するに、「じゃあやめちゃおう」になるのは分かっている。結婚当初から木目の可愛い古材テーブルを欲しがっていたことを知っているんだ。
だけど、これだけはこれだけは…譲れない。
こたつは、俺のLOVEアイテム。
ツンが際立ちすぎるみきにしれっと甘えられる四角い箱。暖かくて、ついついウトウト。みきも暖かさに任せて幾分柔らかくなる。そして付け込む、隙。隙。隙!
ごろにゃん。っと(絶対に口に出しては言えないが)寝ぼけたようにみきの膝に飛び込んで、柔らかくなったみきは、仕方ないわねと膝を崩してくれる。
至福の時!
絶対にダメだ!一つ一つ毎年減っていくラブシチュエーション。コレだけは続けよう!
ね?ね?っと訴えるようにみきを見た。
みきはその視線をかわすように味噌汁を啜った。見透かされている…気がしないでもない。
俺は反抗するぞー!
初めての反抗だ!
「そうだな~。こたつはやめたくないな~」
みきがギロリと睨んだ。
怖くないぞー。
俺は心で呟き、目を合わせず多分ハムエッグを突いて頬張った。おしい、ハムエッグじゃなくて焼き魚だったか!今日もファンタジー。
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