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「言ってるぶんには構わないけど。あまり本気とかならない方がいいぞ。どうせあいつ、眞名実一本だろ。今はよそに目が向きそうな様子じゃないよ」
「うん、でも、眞名実はその気ないってことでしょ?もう。前はちょっと付き合いかけてたのかもだけど。自由に幸せになって、って言ってんだから。あたし、眞名実に訊いてみよっと。神野くん、もう要らないんならあたしがもらうよって。その方が椿原だって都合がいいでしょ?ライバルが減るよ」
そりゃ勿論そうだけど。あれでなかなか奴はしぶとそうだからな。俺は素っ気なく言い放った。
「あいつは胸のでかい女は好みじゃないってさ。ぺったんこのロリ顔がどストライクなんだ」
「…何度でも言うけどさ、本当まじ心底からデリカシーないよね。あんたって」
そんなどうでもいいやり取りを交わしながらぼんやりと思う。これで一件落着、と言っていいのか。
眞名実が無事で元気で新しい場所で仕事を始めてる、ってことだけは確かめられた。だけど、まだ俺にはあいつとの距離を回復できる目処はかけらもない。
今すぐとは言わないけど。いつか、俺の本当の気持ちを何もかも伝えてあいつにわかってもらえる日は来るのかな。このままここで、ぼんやりとそういうタイミングが向こうからやって来るのを待つだけじゃ。
いつか何もかも、手遅れになりそうな気がして仕方ないのに…。
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