君のために

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君のために

コンサート当日は少し小雨が交じる日だった。 「パパ、ママ来てくれてありがとう」 不安げに舞花を見つめる二人を少しでも落ち着かせようと舞花は精一杯の笑顔を向けた。 「久しぶりに舞花のドレス姿を見られて嬉しいよ」 本音をつぶやくように言った父の言葉に舞花は少し照れたような表情を見せた。 「梨穂がこんな素敵なドレスを作ってくれたから」 歩くたび花が舞うように揺れるデザインのドレスを舞花は自慢げに見せつけた。 「パパが張り切って大騒ぎで生地探ししたからね……。本当に親ばか」 そう呆れるようにいう梨穂をギュッと抱きしめ、舞花は 「ありがとう」 と言ったあと、ちらりと隣の宗次の顔を見つめた。 「今度、二人のことも教えてよね」 小さな声で、梨穂の耳元にささやくと、梨穂は慌てて舞花の体を離し 「何言ってるの?勘違いしないでよね!この人は、鈴ちゃんの兄というだけの人よ。鈴ちゃんがパパのコレクションに興味を持ってくれてて……」 と声を張った。 いきなり騒ぎ出した梨穂を見て宗次は 「鈴がどうかした?」 と首をかしげたが、梨穂はそれを無視するように 「とにかく頑張りなさいよ!」 と舞花の肩をポンッと叩いた。
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