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愛を奏でて
「鍵盤って何で、”鍵”なんだろう」
舞花は小さな疑問をつぶやいた。
「あーそういえばあまり気にしたことなかったな。何でだろう」
「でも、たまに鍵を開けるみたいに、その音が自分の思い描いていた形にぴったりはまることあるよね」
「それは舞花だからだよ。俺はない」
悠翔は、譜面を見つめながら笑った。
「私は逆に曲を作るってのがいまいちしっくりこないよ。悠翔みたいに素敵な曲がかけたら良いのに」
「そしたら俺、いらなくなっちゃうだろ」
「そんなことないよ。悠翔がいないと、うまく感情入れてピアノ弾けないもん」
「俺も、舞花がいないとまともな曲かけない」
見つめ合って笑うと二人には温かい空気が流れた。
「あっ、そうだ。そろそろ庭はアヤメが咲くよ」
あのコンサートの日から、半年以上の歳月が経っていた。
舞花が大切にしている庭は季節ごとに彩りを変え、変わらずに花を咲かせ続けていた。
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