はじまりの手紙

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車の中から見える景色はいつも退屈だ。 幼い頃は流れゆく景色にワクワクと胸を踊らせた記憶があるが、高校生となった今では、いったい何をあんなに夢中で眺めていたのかすら覚えていない。 「悠翔さま、到着いたしました」 視線を落としていたスマートフォンから顔を上げると、そこには見慣れた光景が映っていた。 「三宮……いつもありがとうな」 改まって言った言葉に少しの間を置いた後、 「いえ、お気をつけていってらっしゃいませ」 と三宮は微笑んだ。 ドアから一歩、外界に出ただけでそこは悲鳴にも似た歓声に包まれる。 「朝から悠翔くんに会えた!もう今日幸せしかない!」 なんて神にでも会ったかのような言葉から 「お荷物お持ちします」 なんて、いったい何の得があるのか分からないような言葉まで……。 耳慣れた言葉にあしらうように答えながら、歩みを進めると 「悠翔、おはよう」 と、ようやく心落ち着く声が聞こえる。 「宗次、おはよう」 歩きだす二人に続くように後ろに列ができる。 それが、悠翔にとっての日常だ。
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