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「じゃあ行ってきます」
父と並んで家を出ると、遠くに梨穂の姿が見えた。
「梨穂~!」
その声に答えるようにぶんぶんと大きく手を振る姿が確認できると
「じゃあね、パパ。お先に」
と舞花は駆け出した。
「転ぶなよー!」
後ろから聞こえる声に小さく手を振って、梨穂の元へと急ぐ。
これはこれで、幸せな時間だと感じている。
「梨穂、お待たせ」
「おはよう、舞花。ねぇ、数学の宿題やった?分からないところがあって」
「わからないじゃなく、忘れてたんでしょ」
「えっ、いやーその……」
「もう。学校着いたら見せてあげる」
「ありがとう。恩に着る」
拝むように手を合わせる梨穂を見て舞花は呆れたように笑った。
梨穂は昔から、こんな感じだ。
舞花にとっての梨穂は”変わらない”数少ない友達の一人だ。
毎日、満員電車に揺られて学校へと向かう。
その時間が苦じゃないのは、梨穂が一緒にいるからだ。
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