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「キャー!!!」
学校を目前に、聞こえてきた悲鳴にも似た声に舞花は驚いた後、顔をしかめた。
「何?」
「……本山悠翔じゃない?」
さして興味なさげに言う梨穂に、舞花も同調したように
「あぁ……」
とだけ返した。
本山悠翔。
学校でその名前を知らない人は一人もいないように思う。
世界的な作曲家の父とピアニストの母を持つ彼が、なぜこの高校を選んで入学してきたのか……舞花はただただ疑問に感じていた。
決して音楽に強い学校とは言えない。
しいて言うなら、この辺りでは一番の進学校ではあるが、中学までこの学校と同等の偏差値の私立中学に通っていた彼は、そのままエスカレーターで高校に進学することもできたはずだ。
素行不良があったという話も聞こえてこなければ、成績が悪かったという話でもなさそうだ。
現に、彼は今でも常に上位の成績を維持している様子だ。
よっぽどの理由があるのだろうか……舞花は彼の後ろに連なる列を見つめながら、そんなことを考えていた。
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