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コンサートが目前に迫った頃、悠翔の母からチラシを渡された。
「はい。あなたの名前も入っているからね」
そこには確かにしっかりと自分の名前が刻まれていた。
「あの……」
「何?」
ずっと気になっていたことを言葉にした。
「”悠翔”くんって、やっぱりご両親から取ったお名前ですよね?」
本山美悠という字をそっとなぞりながら、舞花は悠翔の父、本山翔の名前も思い浮かべていた。
「えぇ、そうよ。二人ともなかなか家にいられない仕事だからね。名前だけでも傍にいられるようにってね」
「何で……そんな名前つけるくらいなのに…本山くんのこと、放っておけるんですか」
少し辛辣に投げかけた言葉に、美悠は少しだけ困った顔をした後、言葉を返した。
「最初は、放っておいたつもりはなかったのよ。仕事が忙しくなってきて、私もチャンスを逃せない時期で必死だったの。でも小さい悠翔はそんな事理解できるわけもなくて。海外公演の度、連絡すると、寂しいって泣くの。ダメな母親って言われてるみたいで辛かったわ。そのうちその辛さから少しでも逃げたくて。連絡もおろそかになっていった」
「そんな……」
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