君のために

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「うん。全力を出し切ります」 そう言って舞花は、梨穂の後に両親を見つめた。 「パパ、ママ。二人ともいつも私に苦労させてるって言うけどね、私が今ここにいるのは二人のおかげだよ。前と住む家は変わっちゃったけど、変わっちゃったから本山くんに出会えた。本山くんに出会えたからここにいる。歩く道は変わっても、私はちゃんとまっすぐ進めるから。だから、もう自分たちを責めないで。いつも本当に、ありがとう」 頭を下げた舞花を見て、二人は目を潤ませたが、父が一言 「本山くんとの関係は……今度詳しく聞かせてもらう」 と言ったことで、その場の空気は少しだけ緩んだものに変わった。 「じゃあ、行ってくるね」 全員に見守られ、舞花はステージ裏へと向かった。 会場のどこにも悠翔の姿は見つけられなかった。 昨夜送ったメッセージにも返信は来ていない。 本山くんは来ないかもしれない。 だけど私はここで、あの曲を弾かないと……。 舞花はぐっとこぶしに力を入れた。
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