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心底ご機嫌の美悠は、舞花への拍手が自分への称賛だと言わんばかりに笑顔を向けた。
「高野さん。すばらしい演奏だったわ」
「ありがとうございます」
「この曲はどんな思いで作ったのかしら」
「この曲は……」
「私が作った曲ではありません」
舞花の言葉に会場がざわめいた。
「彼が望んでいるか分からないので、この場では名前を申し上げませんが……この曲を作ったのは私と同じ歳の男の子です」
その言葉に、美悠の顔が強張るのを感じた。
「しばらくの間、曲を作れなかった彼が久しぶりに完成させた曲。それがこの曲です。私はその曲を、無理を言って本日弾かせてもらいました」
「どうしてこの曲を選んだのかしら」
なるべく冷静に、そして確実に真意を探ろうと美悠が必死に食らいついてくるのが分かった。
「私はコンサートに出るためにこの曲を選んだわけじゃありません。この曲を弾くためにコンサートに出たんです」
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