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会場がまたどよめいた。
いったいどういう意味なのか、誰もが受け止められていないようだった。
「この曲を知ってほしくて。この曲を作った人の才能を認めてほしくて。だから今日、私はここに立っています。皆さん、いかがでしたか?私のピアノではなく、この曲の感想が知りたいです」
舞花が会場に呼びかけると、少し静まった会場に、また大きな拍手の渦が生まれた。
ただ一人、横で戸惑った表情を浮かべる美悠以外は、会場が一つになった瞬間だった。
「美悠さん、私にこんな場を与えてくれてありがとうございます。彼の才能を知ってもらえる場を与えてくれてありがとうございます」
舞花が深く頭を下げると、美悠は我に返ったように
「こちらこそ、ありがとう。高野舞花さんでした。皆さん……大きな拍手でお見送りください」
と続けた。
舞花はその後、コンサートの終わりを待たずにロビーに出た。
一人になり、ふーっと息をつくと、足の力がいっきに抜けたようにへたりこんでしまった。
とんでもないことをしたのかもしれない。
だけど、やるべきことをやった。
そう自分に言い聞かせた。
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