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あらすじ
目覚めるとそこは屋外階段の踊り場だった。
そっと開けた瞼の隙間から太陽の光が、容赦なく侵入する。その瞳から見える景色は白。まだ目が慣れない。
「たけしっ、たけしー!」
誰かが僕の肩を揺らしている。その声は透き通るように心地よく、触れた手は柔らかかった。
「ねぇたけしってば!起きて!」
少し目が慣れてきた。目の前にいるのは女の子。シャンプーのようないい匂いが、ふわっと鼻腔をかすめる。君は天使なのか?
「起きて!もう朝だよ!こんな所で寝てたら、風邪引いちゃうよ!」
ああそうか、もう朝なのか。だからこんなに外は明るくて...って、え?朝?
「やばっ!!今何時!?」
ガバッと起き上がる。夢の中のような心地良さから、一気に現実へと引き戻される。
「朝の9時だけど?」
朝の9時。その言葉に全身の血の気がスゥっと引いた。もう朝のミーティングが始まってる時間じゃないか。最悪だ。きっと上司から鬼電が来てるに違いない。ああ、なんて言い訳しよう。いや、素直に謝った方がいいのか?それよりも今はとにかく会社に行かなければ。
ドカリと起き上がり、グチャグチャになったスーツを直しながら、この汚い屋外階段を降りようとした、その時だった。
「ねぇ待って!」
突然、謎の可愛い女の子に腕を掴まれる。
「今日は日曜日だよ。」
「え?」
「今日は日曜日。仕事休みでしょ!」
おもむろにポケットの中のスマホを取り出す。
○月○日(日)の文字に、一気に気が抜けた。そういえば、スーツが冷たい。昨日雨だったのか。それなのに僕は、屋外階段の踊り場なんかで眠っていたのか。
「良かったね!」
自分のアホさをよそに、嬉しそうに笑う目の前の女の子を見て、僕は余計に気が抜けてしまった。
君は一体誰なんだろうか。
疑問はある。しかし今は、つかの間の安堵感を共感できればそれでいい気がした。
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