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ただの未来の歌さ、お嬢ちゃん
この十字路から学校まで、約15分の道のりだ。
それを考えた時、腹がふっと何かが無くなるような不思議な感覚を感じた。
まるでそれは急勾配を猛スピードで下るジェットコースターに乗っているようだった。
彼女が激昂して以来、僕らは言葉を交わしていない。
だが何故だか先ほど、いや、一年前よりも距離が近い気がするのだ。
きっとそれは僕の思い込みで、しょうもない気の迷いから生じた妄想なのだろう。
だが結局世界とは、自分の見るもの、聞くもの、感じるのものが作り上げているのだ。
なら僕はこの心にある喜びを、お茶を飲んだときのような暖かさを、味わってもいいではないか。
「...ねぇ、なんでそんな嬉しそうな顔してるの?」
不思議そうな顔をして、少女は僕の顔を覗き込んでくる。
「もしかして...M?」
「ちがう、絶対違う」
するとなんだそんなどうでもいい会話がよほどおかしかったのか、彼女は腹を抱えて笑った。
「ふふっ」
「ははっ」
つられて僕も笑ってしまう。
もし一年前あんなことを言わなければ、こうして僕たちは笑って一緒に歩くことができただろうか。
今となってはそんなことは分からない。
「ブラウニー、美味しかったよ、悔しいけど」
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