あなたが拾ってくれたのは

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  私はある種の病にかかっていた。  それは私がだけがひっそりとその存在を感じられる心の深くに根づいた痛み。  私は人並みの幸せは望めないのだと、その痛みが言う。  ことさら深いトラウマがあるわけじゃない。  ただ幼い頃から人と関わることが少し苦手だというだけのこと。  それでも寂しさのような苦々しさのような、酸っぱくて苦いものがいつも私の喉の奥にはあった。  そう思うと私の心はいつも喉の奥にあったのかもしれない。  でもひどく落ち込むときには胃のあたりがキリキリしたし、それなりに楽しんでいるときには背中のあたりが温かくなったりした。  そうして私の心は身体の中をあちこちへ引っ越しながらたびたび喉の奥で故障した。  とくに人に対するときは。  その中でも一番、喉の底が重く焼けるように痛むのは恋をしたいと願うときだった。
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