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二人の姿が見えなくなると、胸元に手を当ててしゃがみ込む。
キリキリと音を立てるように痛む胃が、高い波を連れてきた。
壁にもたれて胸を押さえていると、あの妹がやってきた。
彩香が苦しそうにしているのを見て、無視はできなかったようだ。
「大丈夫ですか?」
彩香の腕に手を伸ばすと、しっかりと支えて立たせてくれる。
「ありがとう…ございます……」
病室まで彼女は彩香の身体を支えてくれた。
「私……清水奏と言います。入院するのは姉の汐里です」
歩きながら彼女が言った。
「私は…折原彩香です。胃潰瘍で入院しました。しばらく退院できそうにないので、よろしくお願いします」
それを聞いた奏は、ふっと笑った。
「その様子じゃ、しばらく退院は無理でしょうね」
皮肉ともとれる言葉だったが、奏に少しだけ近付けた気がして嬉しかった。
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