第1章 序節 招待状  唯

10/39
前へ
/200ページ
次へ
母たちは、帰り道の途中にあるスーパーで買い物をすると言って、私たちと別れた。 家に着き、部屋に入るとすぐ、ハンガーに新調のブレザーを壁にかける。 真っ白なワイシャツのボタンを2つ外した時、私の第六感が働いた。 ──ガラガラッ。 「コラッ、のぞき魔!」 隣の家の窓には、一瞬バツが悪そうな顔をするゆうくん。 ──ガラガラッ。 「あ゛? この露出狂!」 と即刻抗議しながらも、少しはだけた私の胸元に視線が釘づけ。 「ちょっと! 見ないでよ!」 「バ……み、見てねぇよ! てかぉお前、早く机の位置変えろ! 窓に向けたのは俺の方が先だろ!」 「私の方が先ですよーだ!」 「いいや。俺の方が」 「そもそも! アンタが机に座ってるのなんて見たことないけどー?」 「‥‥っ」 「ブバァーーカッ!」 ──バタンッ! 私は舌を出して窓を閉め、両手でカーテンを握って勢いよくクロスさせる。 でも実は、数年間に及ぶこの近隣トラブルも、私とって幸せを感じる時間の一つだ。  
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!

133人が本棚に入れています
本棚に追加