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翌日
──ガヤガヤ。
──ザワザワ。
私は、終礼が済むと同時に教室を飛び出した。
そして、2組の窓枠から呼びかける。
「ゆうくーん、一緒に帰ろ!」
振り向いた彼は、カバンに教科書を詰めながら答えた。
「悪りぃ。今日からムリだ」
「ぇ……」
気持ちの高揚を冷めさせる現実。私の予想では、一緒に帰れるはずだった。
「でもだって、部活道具持ってきてないじゃん!」
「今日は初日だから、部員の顔合わせだけ」
「えぇーっ」
なんだか独り取り残された気分。
それが目に見えたのか、ゆうくんは今にも教室から出ようとする青木さんの背中を指差した。
「じゃあさ、彼女と一緒に帰ったら? 同じ地元なんだし」
「‥‥ぁ、そうだね!」
私はすぐさま、小さな背中を追いかける。
「青木さん!」
呼び止める声にビクついた肩、少し間を置いてゆっくりと振り返った。
「堀川さん……さ、さようなら」
深々と丁寧なお辞儀。私たちの関係性を表していた。
「ちょっと待って!」
「ぇ?!」
彼女はもう一度振り返り、眼鏡をクイッ。
私はここぞとばかりに、渾身の笑顔で言う。
「ねぇ、一緒に帰ろっ?」
「‥‥へ?」
まるで異国の言葉を聞いたかのような表情を見せたかと思うと、
「ぇ、ぁ……まさか、わ私とですか!?」
あからさまに動揺しはじめる。
「うん! イヤ?」
「全然! そんな全然!!」
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