第1章 序節 招待状  唯

12/39
前へ
/200ページ
次へ
こうして私たちは初めて肩を並べて歩く。ものの、校門を出るまで会話はなし。 私は、どんなことから話すべきかを模索していた。 どうせなら、一気に距離を縮めたいとも。 「そうだ!」 またも彼女の肩がビクつく。昔から、“声が大きい”とよく言われていた。 「今日から真央ちゃんって呼んでもいい?」 「ぇ?」 「いや、やっぱり真央にしよっ!」 当の真央は、緊張を示すように、カバンを両手でギュッと抱きしめている。 「ちょっと馴れ馴れしいかな?」 「そんなこと……ない」 「じゃあ決定ね! 私のことはユイでいいから」 「‥‥う、うん」 今になってやっと、彼女の強張っていた頬が緩む。 それどころか、饒舌化した。 「なんか夢みたい。唯ちゃんって、私の憧れだったから……」 「憧れ? クスッ、何それ!」 「 だって頭も良いし、運動もできて、それに桜峰中で一番可愛かったし」 「またまた! お世辞が上手いね」  
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!

133人が本棚に入れています
本棚に追加