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「お世辞じゃないよ! いつだったかな、男子がコソコソ話してたんだ」
真央は、私の正面を後ろ向きで歩きながら続ける。
「みんな口を揃えて、『唯ちゃんと付き合いたい』って言ってた」
「やめてよー! 冗談で言い合ってただけでしょ?」
「ちがうもん!」
彼女はぐっと立ち止まり、キッと私を睨みつける。
「その時思ったんだから! "もし自分が男なら、私も唯ちゃんと付き合いたいなー"って」
あまりにも真剣なその表情に、すっかり謙遜を忘れてしまった。
「ぁありがとう。‥‥後ろ、危ないよ」
真央の背後に駅の階段が迫り、私はそっと彼女の腕を引く。
すると、
──タッタッタッ。
軽快に階段を駆け上がりながら、
「その時こうも言ってた。『だけど、唯ちゃんには結城がいるから絶対にムリだな』って」
「ぇ!?」
驚いて立ちすくんだ私。
途端、真央は"してやったり"の顔をしながら、私のいる一段上まで戻ってくる。
「やっぱり、結城くんがいるから聖光を選んだの?」
昨日も訊かれた、この質問。だが、本人以外なら素直になれる。
「う、うん」
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