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真央は電車の中で色々話してくれた。
幼い頃から、人の前だと緊張してしまうコンプレックスを抱えていること。
だから友達の輪という調和に飛び込めず、逃げるようにして勉強に励む日々の積み重ねだったこと。
その甲斐あって学校では常に成績上位だったが、いつも心のどこかに虚しさを感じていたことも。
かなり気まずくなってしまった空気を払拭しようと放った次の言葉に、彼女の今の思いは集約されている。
「何か、新しいこと始めたいな……」
希望を含んだ嘆き。不覚にも胸が踊る私。
「真央ちゃん!」
「ぇ、急にどうしたの!?」
食い入るように彼女を見て、真剣に問う。
「私と一緒にマネージャーやらない?」
「‥‥マネージャー?」
「うん、そう! 野球部の!」
――…………。
たった数秒で真意を読み取った真央は、噴き出すように笑った。
「プッ── ハハハハッ!」
「ぇ? え?!」
戸惑う、当然、私。
「ごめんごめん! いや、本当に結城くんのこと好きなんだなぁ~ってさ」
彼女の嘘偽りない笑顔を見れたことが嬉しくて、私も同じ嘘偽りのない思いで返す。
「そうだよ! あいつの事、大好きなんだ……」
「分かった。親に相談してみるね! 部活動に参加したいなんて、きっとビックリするだろうな」
「うん!」
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