第1章 序節 招待状  唯

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耳だけだった熱さが、一気に顔全体へと広がる。 その内訳は、恥ずかしさ半分、怒り半分。 「あ゛ぁい゛ぃつ゛ぅ……昭和の変態か!」 でも正直、私の携帯を初めて鳴らした人が彼で嬉しくもあった。 「そろそろ携帯をしまってください」 急に教師らしい声つきに変わった担任は、皆の緊張をほぐすように、自分の身の上話を始める。 聞くと、昨年子供が生まれたばかりの新婚らしい。 「男の子なんだけど、もうホンットーに可愛くてしょうがないんですよ! 僕の待受もね」 ――…………。 「ぁ……はい。携帯はしまいます」 「「ハハハハッ──」」 「とまあ、僕の話はこれぐらいにして。これからみんなの……と言いたいところですが、今日は親御さんもいて恥ずかしいと思うので、明日に」 そして、生徒手帳に沿いながら、聖学生の心得を説いていく。 真新しい机、窓から見える景色。目に映るすべてのモノが新鮮で、集中力が散漫な私。 だから、時間の経過はあっという間だった。 「起立! 礼!」 「「さようならー」」 新たな門出の終わりと同時に、私は母を置いて教室を飛び出す。 廊下を埋めつくす生徒たちの間を縫って、憎たらしいアイツの横顔を見つけた。 「動くな、コラッ!」 「おわっ!」 私が今どんな顔をしているか。 血相を変えて逃げる彼の様子から、きっと鬼の形相をしているに違いない。 「待てぇー!」 「く、来んなよ!」 「このド変態!! あんたのせいで恥かいたのよ! 3回まわって土下座しろー!」  
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