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耳だけだった熱さが、一気に顔全体へと広がる。
その内訳は、恥ずかしさ半分、怒り半分。
「あ゛ぁい゛ぃつ゛ぅ……昭和の変態か!」
でも正直、私の携帯を初めて鳴らした人が彼で嬉しくもあった。
「そろそろ携帯をしまってください」
急に教師らしい声つきに変わった担任は、皆の緊張をほぐすように、自分の身の上話を始める。
聞くと、昨年子供が生まれたばかりの新婚らしい。
「男の子なんだけど、もうホンットーに可愛くてしょうがないんですよ! 僕の待受もね」
――…………。
「ぁ……はい。携帯はしまいます」
「「ハハハハッ──」」
「とまあ、僕の話はこれぐらいにして。これからみんなの……と言いたいところですが、今日は親御さんもいて恥ずかしいと思うので、明日に」
そして、生徒手帳に沿いながら、聖学生の心得を説いていく。
真新しい机、窓から見える景色。目に映るすべてのモノが新鮮で、集中力が散漫な私。
だから、時間の経過はあっという間だった。
「起立! 礼!」
「「さようならー」」
新たな門出の終わりと同時に、私は母を置いて教室を飛び出す。
廊下を埋めつくす生徒たちの間を縫って、憎たらしいアイツの横顔を見つけた。
「動くな、コラッ!」
「おわっ!」
私が今どんな顔をしているか。
血相を変えて逃げる彼の様子から、きっと鬼の形相をしているに違いない。
「待てぇー!」
「く、来んなよ!」
「このド変態!! あんたのせいで恥かいたのよ! 3回まわって土下座しろー!」
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