18人が本棚に入れています
本棚に追加
/235ページ
chapter 2.鳥籠の小鳥は
まだ、外は薄暗い。
やけにキリキリと痛む胸を抑え、人影はゆっくりとベッドから起き上がった。
体を覆っていた布団がパサリと落ちる。
むき出しの肌に刻まれた青い刺青を隠すようにナイトテーブルに置いてあったワイシャツを羽織る。
はっきりとしない意識の中に、旧い記憶が過る。
あぁ…、またか。
自嘲的な笑みを浮かべながら冷たいタイル張りの床に足を降ろし、立ち上がる。そのままひたひたと素足で歩むとカーテンに手を掛けた。
淡い光に移ったその顔は刃物のような美貌。黒目がちなサファイアブルーの瞳は光を映している。まだ幼さの残るその容姿は男子にも女子にも見える
早々に窓から離れ、ワイシャツのボタンを閉めるとブーツに足を通した。
全ての準備が終わると紺色のロングコートを羽織り、鞄の肩紐を肩に掛ける。
木のドアを開け、部屋を後にする。
「ミーリー、もう起きたの?」
物音を聞き付けたのか、階段の下から保護者であるヤヨイの声がする。
何も返す事もなく階段を降りきると、一階のリビングのソファーに座るヤヨイが振り向いた。
最初のコメントを投稿しよう!