chapter 2.鳥籠の小鳥は

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 彼女はエルフ族で、見た目では年齢がよく分からない。プラチナブロンドの髪は真っ直ぐに肩に掛かっている。この国の自警団である騎士団の小隊長でもある彼女は普段家にいる事が少なく、毎日帰って来るのは夜中だ。  そんな彼女が今日は仕事が無いのか遅番なのかは知らないが、朝早くに家にいるのは珍しい。  ミーリーを見ると少し困ったような笑みを浮かべた。 「昨日、夜飯ありがとね。朝は作ったから食べて行きなさい」 「いい…」 「もしかして…また、調子がわるいの?」 「姐さんには関係ないだろ」 「あんた、昨日の怪我だってそう言って逃げて!」  思わず声を荒げて言ってしまったことに後ろめたさを感じたのか、とたんにしまったと言うような顔をした。  そんな事もお構い無しにミーリーは玄関に向かう。 「行ってきます」  ドアノブに手を掛け、ドアを開ける。ヤヨイの何か言いたげな気配を背に受け、外に出た。  しばらく歩くと、庭の木の根本にいるヤヨイの仕え魔である巨大な狼──ブロウが顔を上げた。 〈最近、やけに荒れているじゃないか。主だってお前の事を心配しているんだぞ〉 「大事な預かりものだもんな」  吐き捨てるように呟くと家を後にした。後ろからブロウが何か言おうとしていたが、それも全部無視して。
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