chapter 2.鳥籠の小鳥は

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 しばらく歩いているとその建物の敷地内に入った。灰色の石でできたその外観は学園というより収容所に見える。少しでもその雰囲気を和らげるためか、回りに鬱蒼と生えた木々はより一層その外観を重たくしている。 「ミーリーっ!!」  突然何やら自分を呼ぶ声がして振り返ると、ふわふわとしていて癖のある濃紺の髪をした少年が横から駆けて来た。身長はミーリーよりやや低いぐらいで、一見すると女の子にみえる。 「なんだ…チロルか。朝から騒々しいヤツだな」 「あなたの下僕でしょ?」 「バカ言え。下僕にもパシりにもした覚えもねぇよ。あいつが勝手にチョロチョロ着いてきていい加減オレはうんざりしてるんだ」 「本人の目の前よ」 「───やっぱりぼくじゃ足手まといだよね……」 「分かればさっさと消えろ」  自信無さげなその言葉にミーリーがだめ押しとばかりに鋭い声で告げる。 「でも、まだ…」 「義理とかなんとか考えなくていいから。オレなんかといたらろくなことないし、風紀委員との抗争に巻き込まれるぞ」 「……」  完全に沈黙したのを確認すると建物に足を踏み入れた。いつも以上にざわざわとうるさい廊下を横切り、階段に向かう。
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