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「───暴君だ…。あいつ、昨日とうとう風紀委員長に罰せられたらしいな」
「いくらなんでもやりすぎじゃない?」
「どっちが?」
「風紀委員よ」
「お前、それ聞かれたらまずいって…」
人々の視線をただひたすら受け流しながら大股ですすむ。あまりにも周りを気にしていなかったせいか、階段から降りてくる人影に気づかず踊り場でぶつかった。
「きゃっ。ごめんなさい」
見慣れない少女だった。まっすぐで艶やかな黒い髪は腰まで伸び、頭頂部には髪と同色の猫に似た耳が生えている。
「あ…、悪い。全く見てなかった……」
ミーリーが謝ると相手は猫耳を少し動かすと前屈みになっていた上半身を起こし、微笑んだ。
「いいえ、大丈夫ですよ。私も疲れ果てていてかなり注意力が欠けていましたから。そちらこそ大丈夫でした?」
「ああ。運動能力が高いお陰で最悪の状況にならずに済んだ」
もし、自分が転んだとしたら、自分は受け身を取れても、階段の下方にいる哀れな被害者を出したかもしれない。
「あ、私…先生に呼ばれているのでこれで失礼しますね」
猫耳少女はそう言って会釈をすると立ち去って行った。
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