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夜には大分熱も下がって来て、香苗には一週間ほど店を閉めると連絡を入れた。
その間、香苗の母親は晴世を快く預かってくれると言う。
小さな町で、ご近所や知り合いの助けが借りられる事に、鈴悟はほとほと感謝した。身寄りのない独身男性に、小学校一年生の男の子なんて荷が重すぎる。
茨はそんな弟を抱えて一人突っ張っているんだと思ったら、何かしてあげられる事はないのだろうか、などと同情心で善人面した自分が顔を出して来て、でもまたそれを拒否られたらと思うと、臆病風が吹き抜ける。
一人にしたらまた倒れる様な気がして、鈴悟は店を閉めた七日間、自宅で甲斐甲斐しく茨の世話を焼いた。
お昼の饂飩を持って茨が寝ている座敷へと向かう。
退屈なのか茨は布団の中で片肘ついたまま携帯を弄っている。
貸した寝間着から覗く鎖骨に、思わず見惚れそうになって息を飲んだ。
「店長……」
「し、仕事じゃない時は普通に、な、な、名前でいいです……」
「じゃあ、鈴悟。もうそんな世話焼かなくて良いって……」
「あ……はい……」
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