第1話 子沢山村

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第1話 子沢山村

ある晴れた日。 信寧王は、庭先にたくさん咲く花々を、筆頭家来・忠仁と愛でていた。 「今年も、たくさんの花が、咲き誇りましたな。」 「ああ。まるで咲かない花など、この王宮にはないように思える。」 「その通りでございます。全ての花は、王の物。花だけではございません。この世に、王が手に入れられない物など、ございますでしょうか。」 信寧王は、後ろにいる忠仁を、チラッと見た。 「それは言いすぎだ。私とて、手に入れられない物もある。例えば、世継ぎだ。」 「王……」 俯く忠仁。 忠仁は、幼い頃から信寧王に、武術を教えてきた守人であり、第3王妃・紅梅の実の父であった。 「我が娘の紅梅が、王の元にお仕えして3年。未だ子ができず、父親としても申し訳なく思っております。」 忠仁は、庭に膝を着き、王に頭を下げた。 「よいのだ。紅梅は私を、慕ってくれている。それだけで、心が休まる。あれはいい娘だ。」
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