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後で気になって調べてみると、色ごとに花言葉も変わるらしい。
白色が「寛容」、青色が「忍耐強い愛」、ピンク色が「元気な女性」。
憂鬱な雨の日を彩れるくらいに、ポジティブな意味も含まれているようだ。
「会長が『そんな花は縁起が悪い』というので、庭に植えるのをやめたことがありまして」
庭に植えられている花を思い出す。季節ごとに何かが咲くようになっているようだ。
これもあとで調べたのだが、ビオラは「忠誠」、パンジーは「純愛」。
こんなことを考えて、気は重くならないのだろうか。
それにしても、また「会長」である。
「あのう、その『会長』という方を、私は存じ上げないのですが」
「そのうちわかりますよ」
会社を出て、初めて目が合った。
きちんとしたスーツを着てあのお辞儀をすれば、それはそれは育ちのいい人になるのだろう。
「絶対に?」
「それはホシノさん次第ですが」
ああ、この人は社長秘書だ。不敵な笑みが腹立たしい。
戦略的な明るさが透けて見えた「神童さん」とは、気が合わないはずだ。
「『リケジョ』は言葉遊びが大嫌いなんですよ」
「...でしょうね」
年上なのだろうが、年代はほとんど変わらないはずだ。
「いいでしょう」の響きが上から目線過ぎて、なんだか敗北感さえ覚えてしまう。
「『会長』は社長のお母様です」
あれ?
一瞬、計算ミスを発見されたかのように不意を突かれた。
でも、どこがどう違っているのか判断する余裕はなかった。
「行きましょう」
紫陽花の家を見ると、すでに猫の姿はなかった。
まだ、小さな花。もうすぐ梅雨を迎えて、見頃を迎えるのだろう。
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