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「それって、ここから歩いてどれくらいですか?」
「さあ?2キロくらいは離れているんじゃないですかね?」
まさか、その格好で歩いていくわけじゃあるまいと思って光太郎が見ていたら、その女性はそのまま彼が説明した店の前の通りを左に向かい600号線を歩いて行ってしまった。
「誰か、知り合いが来たんですか」
店の中に戻ると、バイトリーダーの多田瀬くんがにこやかに出迎えてくれた。バイトリーダーと言っても、光太郎より一回り年上の43歳。いつも営業スマイルが身についているが、ひとたびその笑顔を消したら、大柄の光太郎でさえそのお腹で宇宙まではじき飛ばしてしまいそうな貫禄である。
「いや、マクドナルドの場所を聞かれてさ。この近くにありましたっけ?」
「ないと思いますけど、近くには。朝マックですかね?今もやってましたっけ?」
いつも笑顔で社交的な多田瀬くんはのんきな口調だ。きっと車で探すのだと思っているのだろう。しかし、この12月の寒さの深まる時期にあの女性はずいぶんと薄着だったと光太郎は不気味な気がした。近所の人だと思いたいが、近所の人がマックの場所なんて聞くだろうか。それに、600号線沿いは田んぼか工場か店しかない。
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