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政「あんなに幼かった子がもう父親かぁ。感慨深いなぁ…大人の入口に立ち歩み始めた君でも、蓋を開ければまだ子供らしさのある。ちゃんと大人に甘えなきゃダメだよー。自分より年上に甘えられなくなる時代がいずれ来る。その時まで甘えてな。君は急いて大人になり過ぎた」
燐「…大人に頼れない修羅場など散々経験してきましたよ…。オレの生まれと今の立ち位置は逆境ばかりみたいなので」
悟「(この人今までは年齢の割に謙虚過ぎるとも思ったけど、周りにいる大人たちの事を考えたらソレも納得いく環境だよね。竜平さんにしても紗耶香さんにしても、政樹さんにしても千春さんにしてもかなり日本の業界でもトップクラスで、有名人なんだもん。そんな人達の元で良い意味で普通に育つハズがないもん)」
そしてロビーのソファーに座り、大画面で中継を見てるけど…じいちゃん色々吹っ切れて生き生きとしているなぁ。
辰弥さんなんて器用に結界でピアノ作って演奏してるし、じいちゃんはそれに合わせて滑っている。
……六十代とは思えない体の柔軟さとしなやかさだ…。これは確かに当時だと世界が夢中になるほどの美しさだ。
特にマダム達には大人気であったろう。
何より、辰弥さんの演奏だってタダで聴けるものでもない…ピアニストを辞め、亡くなって弾けないはずだが、普通にピアノ弾いてるわ。あの人。
「……もうちょっと真面目に滑れよ。征竜」
「久々なんだよこっちは」
「出来るくせに…お前の本気をオレは見たい」
「全く。せっかちだなぁ」
……あれ?4回転…5回転????
今、じいちゃん5回転したよ???
「…もどかしかったんだぞ。オレだけが知ってるお前のジャンプ」
「……当時3回転半とかが限界の選手たちを見てたからな。バランス調整してたんだよ…オレだけが特化したら他が腐っちまう」
「…湊の考え方って…お前にも似たなぁ」
「父親はお前なんだけどな?」
「確かにDNA的に湊はオレの子だよ。けど、湊が誰を見て育ったか…誰を習って学んだかは当てはまるのは父親だけでは無い」
「……動揺してるのか?その演奏」
「うるさい。久しぶりなんだよピアノ触るの」
「それ本当にピアノと呼んでいいのか???」
「お前は舞ってればいい。お前に合わせた旋律をオレが作るから!」
「オレ人のペースってあまり好きじゃないんだけど…お前も何言っても聞かないからなぁ…」
「…けど、生演奏だとオレしかお前の望む音は出せないだろ?」
「お前の奏でるメロディーは好きだよ。でも、お前本体は要らないかな」
「………………」
「悲しむより怒るのか…オレはお前を失った時怒りよりも悲しみだった。つくづくお前とは本当の意味で合わないなぁ。拒絶の言葉に少し喜ぶなよ…サイコパスか?…湊の父親だもんな」
「………………」
「…お前もポーカーフェイスだが、音は正直だよな。杏花さんがピアニストでいて欲しかったのもそれが理由じゃないか?」
辰弥さん喋ってないんだよなぁ…。
シヴァもじいちゃんに見惚れて何もしてないし。
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