第1話 監獄島の殺人鬼たち

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 屋上にはお茶会をしている5人の殺人鬼がいた。 「ここにいるのもすごいメンバーね」  まずは、この物語の冒頭でレティシアを殺そうとしていた3人。 〝ハンブルクの吸血鬼〟 ブルクハルト・ミュラー。 〝女装殺人鬼〟 ジャクリーン・レイン。 〝地獄の料理人〟 デイモン・ブッチャー。  そして、 〝悪魔召喚士〟 アレクサンドラ・ブローニン伯爵夫人。 〝毒殺メイド〟 キャリー・メイ。  関わりたくないメンツなので帰ろうとすると、ブローニン伯爵夫人が声をかけてきた。 「あら、レティシアじゃない。皆でお茶を飲んでるから、こちらへいらっしゃい」  伯爵夫人は父アルセーヌ・ルパンの友人で、レティシアが子供の頃はいっしょに遊んでくれた。  遊びと言っても、銃の使い方や毒の見分け方といったことだが。 「俺は退散するぜ。あいつらはヤバい。悪党として全然、格が違うし」  詐欺師のディーノは踵を返して、階下に戻っていった。  レティシアは仕方なく、お茶会の席に向かう。  空は抜けるように青く、風も穏やかだが、5人のテーブルのまわりは重くよどんでいる。  屋上は高さ2メートルほどの壁で囲まれていて、かつて石落としや矢狭間だった穴から海が見える。  席に着くと、3人の殺人鬼はいつもどおりの反応してきた。 「レディ・ルパン、相変わらずお美しい」 「あたしより可愛いなんて許せない!」 「かぶりついて生肉のまま喰ってみてえ」  本当にどうしようもないやつらだ。  医師のミューラーは一見、上品な紳士だが、こいつも頭のネジが外れている。  お茶はメイドのキャリー・メイが入れてくれた。  毒が入っているかもしれないので口はつけない。
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