第1話 監獄島の殺人鬼たち

2/12
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
 両手首を縛られて絞首台に吊されている美少女がいた。  傍らには眼鏡をかけた品の良さそうな初老の男。 「では、これからルパンの公開処刑を執行します」  初老の男が口にした〝ルパン〟とは、19世紀末から20世紀初頭に大活躍した怪盗紳士アルセーヌ・ルパンのことではない。  ルパンの娘〝レティシア・ルパン〟のことだ。  レティシアも父親の影響を受けて怪盗をしている。  ルパン家の血がそうさせているのかもしれない。 「こんなことをして、ただで済むと思ってるの?」  意思の強そうなブルーの瞳を向けてレティシアが言った。 「ずいぶん威勢がいいですね。泣いて命乞いでもしたら楽に死なせてあげましたのに」  初老の男はスーツのポケットから手術用のメスを取り出すと、レティシアの頬をピタピタと叩いた。  彼は医者である。  名前はブルクハルト・ミュラー。  別名〝ハンブルクの吸血鬼〟  麻酔をかけずに手術をおこない、 流れた患者の血を飲むのを生きがいにしている殺人鬼だ。  この場には他に殺人鬼がふたりいた。 「ていうか、ほんと美人さんよね? あたし、メチャクチャうらやましい!」  こう言ったのはジャクリーン・レイン。  ジャクリーンは女性ではない。  女装した男だ。   完璧な女性になるために、美しい女性のパーツを切断し、特殊な技術を使って自分の体に縫い合わせている。  自分よりすぐれたパーツの持ち主が現われれば、殺して取り替える。  そのせいもあって彼の姿はとても美しい。  3人目の殺人鬼はデイモン・ブッチャーだ。  この太った巨漢はレティシアを賛美したジャクリーンを笑った。 「だが、そんな美人もズタズタに切り刻めば、ただの肉片だぞ。腹を引き裂けば長さ6メートルの腸がドバドバ落ちてくる」 「もうっ、そんな色気のない話やめてよ!」 「だが、レティシアの肉は美味そうだな。最高の料理をつくれそうだ」  ブッチャーは料理人で、人間の肉や内臓を使って料理する。  骨も出汁に使い、人体をほとんどムダにしない。  今まで料理した人間は数知れず、料理はすべて胃袋の中で消化され、彼の血肉となっている。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!