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両手首を縛られて絞首台に吊されている美少女がいた。
傍らには眼鏡をかけた品の良さそうな初老の男。
「では、これからルパンの公開処刑を執行します」
初老の男が口にした〝ルパン〟とは、19世紀末から20世紀初頭に大活躍した怪盗紳士アルセーヌ・ルパンのことではない。
ルパンの娘〝レティシア・ルパン〟のことだ。
レティシアも父親の影響を受けて怪盗をしている。
ルパン家の血がそうさせているのかもしれない。
「こんなことをして、ただで済むと思ってるの?」
意思の強そうなブルーの瞳を向けてレティシアが言った。
「ずいぶん威勢がいいですね。泣いて命乞いでもしたら楽に死なせてあげましたのに」
初老の男はスーツのポケットから手術用のメスを取り出すと、レティシアの頬をピタピタと叩いた。
彼は医者である。
名前はブルクハルト・ミュラー。
別名〝ハンブルクの吸血鬼〟
麻酔をかけずに手術をおこない、 流れた患者の血を飲むのを生きがいにしている殺人鬼だ。
この場には他に殺人鬼がふたりいた。
「ていうか、ほんと美人さんよね? あたし、メチャクチャうらやましい!」
こう言ったのはジャクリーン・レイン。
ジャクリーンは女性ではない。
女装した男だ。
完璧な女性になるために、美しい女性のパーツを切断し、特殊な技術を使って自分の体に縫い合わせている。
自分よりすぐれたパーツの持ち主が現われれば、殺して取り替える。
そのせいもあって彼の姿はとても美しい。
3人目の殺人鬼はデイモン・ブッチャーだ。
この太った巨漢はレティシアを賛美したジャクリーンを笑った。
「だが、そんな美人もズタズタに切り刻めば、ただの肉片だぞ。腹を引き裂けば長さ6メートルの腸がドバドバ落ちてくる」
「もうっ、そんな色気のない話やめてよ!」
「だが、レティシアの肉は美味そうだな。最高の料理をつくれそうだ」
ブッチャーは料理人で、人間の肉や内臓を使って料理する。
骨も出汁に使い、人体をほとんどムダにしない。
今まで料理した人間は数知れず、料理はすべて胃袋の中で消化され、彼の血肉となっている。
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