第1話 監獄島の殺人鬼たち

4/12
前へ
/55ページ
次へ
「レディ・ルパンのパンティは純白でした!」  3人の殺人鬼たちの邪な目がレティシアの下半身に注がれた。  怪盗になると決めた時、覚悟はしていたが、実際にこうした状況になると恥ずかしい。 「レディ・ルパン、怪盗のくせに純白パンティはまずいんじゃないですか?」 「だって、白の方が可愛いじゃない!」 「そうよ、可愛い女の子は純白をはくべきよ!」 「めずらしく意見が合ったわね、ジャクリーン」 「いや、悪党は黒の挑発的なパンツをはくべきだと思う」 「それは決めつけよ、ブッチャー。わたしにはいろいろな下着を試す権利がある」  下着談義をしながら、レティシアは今の危機を打開する方法を考えていた。   縄抜けの技術で何とかロープを解こうとする。  だが、結びめは硬く、ロープは太くて丈夫だ。  逃れようとすればするほど手首に食い込んでいく。  おまけに殺人鬼たちの関心は、すでに次に移っていた。 「では処刑の続きをおこないましょう。まず分け前の確認ですが、私がレディ・ルパンの血、ジャクリーンが美しいパーツ、ブッチャーが残りの肉と内臓と骨。それでよろしいですかな?」 「いいわよ」 「OK」  下着談義の時とは違い、3人は殺人鬼の表情になっていた。  ミューラーの冷徹な目、ジャクリーンの嘲るような笑み、ブッチャーのダラダラとたれるよだれ。  3人に共通しているのは、大怪盗アルセーヌ・ルパンの娘を亡き者にできるという静かな興奮だ。  ルパンの娘を殺したという実績は裏社会の勲章にもなる。  何かまずいかも……。  さすがのレティシアも焦り始めた。  幾多のピンチを切り抜けてきた彼女だが、3人は超弩級の危ないやつらだ。  先程まで行動を共にしていた男を捜した。  彼はレティシアが捕まると、一目散に逃げていった。  やはり口だけの男だ。  現在、レティシアは監獄島という絶海の孤島にいた。  なぜここにいて、こんな目に遭っているのか?  話は3日前にさかのぼる。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加