第1話 監獄島の殺人鬼たち

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「それでは予告どおり〝ナイルの瞳〟をいただきます」  巨大な宝石・ナイルの瞳を手にしたレティシアは警官たちに深々とお辞儀をした。  場所はルーブル美術館の特別展示室。  そのいでたちは、父親ゆずりのシルクハットとマントとモノクル。  洗練されたデザインのシックなドレス。  ドレスの丈はこの時代(1920年代)としては短く、膝上10センチだ。  そのまま展示室を抜け、隠し通路を使って外に出る。 「待て、ルパン! あの小娘を捕まえろ!」  ガニマール警部の声が背後で聞こえたが、捕まるつもりなどまったくない。  ちなみに、このガニマールは、レティシアの父アルセーヌ・ルパンの逮捕に情熱を燃やしたガニマール警部の息子だ。  通路を抜けて美術館の外に出ると、新聞と雑誌の記者が待ち構えていた。 「レディ・ルパン、コメントをお願いします!」 「見事ナイルの瞳を盗み出した感想を!」  マスコミを使って宣伝するのはルパン家の伝統だ。  当然、取材に応える。 「やっぱり、ひと仕事終えた後っていうのは最高ね。これからアジトに戻ってナイルの瞳を見ながらゆっくりお風呂に入るわ」 「今回はどんな手口だったんです?」 「う~ん、これは企業秘密なんだけど、1年かけて美術館に隠し通路を造ってたの。わたしの手下に建築業者を装わせてね」 「ル、ルーブルに隠し通路ですか!?」 「ええ。10個くらい。おバカな警察には発見できないように造ってあるから今後も活用させてもらうわ」 「世間では、お父様を越えたという評判なんですけど」 「パパなんか、とっくに越えてるわよ。あの人は過去の人」 「その口ぶりは、お父様と仲が悪いんですか?」 「そろそろ警察が来るから、ごめんなさい。もっと話を聞きたければ、来週ニースで静養しているから来て」
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