第1話 監獄島の殺人鬼たち

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 レティシアはこう言うと跳躍し、自動車や街路樹、建物の窓やバルコニーを巧みに使って屋根の上にのぼった。  ここからは屋根づたいにのアジトまで戻る。  身軽さはレティシアの卓越した能力のひとつだ。  屋根の上から見るパリの街は美しかった。  いくつもの橋がかかるセーヌ川。  シャンゼリゼ大通りの先にある凱旋門。  そびえ立つエッフェル塔。  オペラ座やノートルダム寺院。  目を凝らせばブローニュの森が見える。  レティシアはパリの街を愛していた。  今、手にしている〝ナイルの瞳〟も美しかったが、パリの街はそれ以上に輝いていた。 「この街は手に入れることができないのよね。ていうか、この街があれば、どんな宝石も美術品も必要ないんだけど」  目の前の風景を見ていると、レティシアはこんなことを考えてしまう。  それからしばらくして異変が起きた。  アジト近くの路地に降り立った時のことだ。  前から2台、後ろから1台の自動車がやって来て、道をふさいだ。  偶然ではなく、意図的なものだとすぐにわかった。敵意も感じる。  レティシアは身構えた。  車から男たちが出て来て、銃を取り出した。  ここは前進。  男たちの態勢が整わないうちに突破する。  前進を選んだのは、前の男たちがもたついていたからだ。  後ろの男の数はふたりなので、銃弾が当る確率も少ない。  だが、それは予想外の所からやって来た。  プツン!  首筋に何かが刺さって鈍い痛みを感じた。  意識が遠のき、足もとがふらつく。  おそらく麻酔針だろう。  針の飛んできた方向に目をやると、建物の3階の窓から小型ライフル銃を構えている男の姿が見えた。  続けて別の方向から麻酔針が飛んできて、今度は太ももに刺さった。  三段構えとはなかなか手が込んでいる。  こんなことをするのは、いったい何者だろう?  レティシアは意識を失い、そのまま倒れた。
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